スマホ姿勢が側弯症に与える影響とは─中高生に増えている“見えない負担”─

スマホ姿勢が引き起こす“新しい習慣性ゆがみ”

近年、側弯症のご相談の中で、「長時間スマホを見ている」「下を向いて勉強している」という生活習慣を持つ中高生がとても増えています。

近年の調査では、中高生の平均スマホ使用時間は1日5〜6時間と言われています。

スマホやタブレットは勉強にも便利なツールですが、同時に“姿勢への負担”を大きくする要因でもあります。

部活動や塾の移動中、帰宅後の動画視聴などを含めると、1日の大半を「前かがみの姿勢」で過ごしていることになります。

つまり、“寝る以外の時間はずっと背中を丸めている”状態。

その結果、背骨だけでなく、肩甲骨・肋骨・骨盤といった全身のバランスに影響し、「姿勢が崩れる → 呼吸が浅くなる → 疲れが取れにくい」という負の連鎖を起こしやすくなるのです。

 

なぜスマホ姿勢が影響するの?

スマホを見るとき、多くの人は自然と頭を前に傾け、背中を丸めた姿勢になります。

実はこの「前かがみ姿勢」、首や背中には想像以上の負担がかかっています。

頭の重さは約5kgありますが、前に30度傾くだけで首にかかる負荷は約18kg。

さらに60度まで傾けると、なんと約27kgもの重さがかかるといわれています。

この状態が長く続くと、首〜背中〜腰の筋肉バランスが崩れ、側弯症の方は、背骨のカーブを支える力が弱まりやすくなります。

 

成長期に特に注意したいポイント

中高生の時期は、身体が大きく成長する「成長期」です。

この時期に背骨へ偏った負担がかかると、カーブが進行したり、姿勢のクセが固定化してしまうこともあります。

特に次のような習慣には注意が必要です。

  • ・スマホを机の下や膝の上で長時間見る
  • ・座る姿勢が片寄っている(脚を組む・片肘をつく)
  • ・寝転んだままスマホを操作する
  • ・動画やSNSを見ながら、何時間も同じ姿勢を保つ

どれも「少しの時間だから大丈夫」と思いがちですが、積み重ねるうちに筋肉の左右差を強めてしまいます。

 

親ができることは「やめさせる」ではなく「気づかせる」

子どもに「スマホやめなさい」と言っても、反発やストレスになることが多いですよね。

スマホをゼロにすることは、今の時代なかなか現実的ではありません。

勉強も連絡も、今やすべてがその中にあります。

だからこそ、“やめる”ことではなく、“気づく”ことが大切です。

たとえば──

・下を向いているとき、首や背中がどんなふうに感じるか

・呼吸が浅くなっていないか

・顔を上げたとき、気持ちが少し軽くならないか

そんな小さな変化に自分で気づける力が、身体を整える第一歩になります。

私たちの身体は、もともと“まっすぐ”に戻ろうとする力を持っています。

ただ、現代の生活の中で、その声が聞こえにくくなっているだけなのです。

 

◆気づくことで身体が「選べる」ようになる

“やめさせる”という行動は一時的ですが、“気づけるようになる”という感覚は一生続きます。

「今日はちょっと下を向きすぎたな」

「背中が丸まってるかも」

「肩を一度回してみよう」

──こうした「気づき」は、強制ではなく“自分の選択”です。

それが続くと、姿勢は意識しなくても整う方向へ動いていきます。

 

◆親御さんにできること

「スマホばっかり見て!」ではなく、「最近、肩こってない?」

「ちょっと背伸びしてみようか」そんな声かけに変えてみてください。

子どもは、“責められること”よりも“気づかせてもらうこと”で変わります。

そしてその気づきは、自分の身体を大切にできる心につながります。

やめさせるより、気づかせる。

そのほうが、きっと優しく、ずっと強い方法です。

「ちょっと下を向きすぎてるかな?」「肩が丸くなってるかも」その“気づき”があるだけで、姿勢は少しずつ整い始めます。

 

今日からできるスマホ姿勢の見直し

側弯症の方にとって大切なのは、「姿勢を完璧に保つこと」ではなく、「負担をかけない工夫を続けること」です。

そこで、日常で意識できるポイントをいくつかご紹介します。

  • ・ スマホの位置を“目の高さ”に近づける 
    机の上で、できるだけ顔を下げすぎないようにしましょう
  • ・ 30分に1回は姿勢をリセット 
    立ち上がって軽く背伸びをしたり、肩を回すだけでもOK
  • ・背中や肩のストレッチを習慣に
    特に「胸を開く」「肩甲骨を動かす」ストレッチは効果的
  • ・ 枕・椅子の高さを調整 
    勉強やスマホを見る時の姿勢をサポートする環境を整える

 

専門ケアで“背中の軸”を守る

当院では、側弯症の方が無理なく姿勢を保てるように、背骨・骨盤・肋骨のバランスをやさしく整えています。

無理に姿勢を「正そう」とするのではなく、身体そのもののバランスを整えることで、“自然にまっすぐ立てる”状態を目指していきます。

その方が呼吸も深くなり、心も落ち着いていきます。

スマホを使う時間をゼロにすることはできません。

だからこそ、ほんの少し意識を変えることが大切です。

スマホを持つ手を少し上げて、背中を伸ばし、深呼吸をしてみてください。

その小さな意識が、未来の身体を守ります。