◆スマホ姿勢が引き起こす“新しい習慣性ゆがみ”
近年、側弯症のご相談の中で、「長時間スマホを見ている」「下を向いて勉強している」という生活習慣を持つ中高生がとても増えています。
近年の調査では、中高生の平均スマホ使用時間は1日5〜6時間と言われています。
スマホやタブレットは勉強にも便利なツールですが、同時に“姿勢への負担”を大きくする要因でもあります。
部活動や塾の移動中、帰宅後の動画視聴などを含めると、1日の大半を「前かがみの姿勢」で過ごしていることになります。
つまり、“寝る以外の時間はずっと背中を丸めている”状態。
その結果、背骨だけでなく、肩甲骨・肋骨・骨盤といった全身のバランスに影響し、「姿勢が崩れる → 呼吸が浅くなる → 疲れが取れにくい」という負の連鎖を起こしやすくなるのです。
◆なぜスマホ姿勢が影響するの?
スマホを見るとき、多くの人は自然と頭を前に傾け、背中を丸めた姿勢になります。
実はこの「前かがみ姿勢」、首や背中には想像以上の負担がかかっています。
頭の重さは約5kgありますが、前に30度傾くだけで首にかかる負荷は約18kg。
さらに60度まで傾けると、なんと約27kgもの重さがかかるといわれています。
この状態が長く続くと、首〜背中〜腰の筋肉バランスが崩れ、側弯症の方は、背骨のカーブを支える力が弱まりやすくなります。
◆成長期に特に注意したいポイント
中高生の時期は、身体が大きく成長する「成長期」です。
この時期に背骨へ偏った負担がかかると、カーブが進行したり、姿勢のクセが固定化してしまうこともあります。
特に次のような習慣には注意が必要です。
- ・スマホを机の下や膝の上で長時間見る
- ・座る姿勢が片寄っている(脚を組む・片肘をつく)
- ・寝転んだままスマホを操作する
- ・動画やSNSを見ながら、何時間も同じ姿勢を保つ
どれも「少しの時間だから大丈夫」と思いがちですが、積み重ねるうちに筋肉の左右差を強めてしまいます。
◆親ができることは「やめさせる」ではなく「気づかせる」
子どもに「スマホやめなさい」と言っても、反発やストレスになることが多いですよね。
スマホをゼロにすることは、今の時代なかなか現実的ではありません。
勉強も連絡も、今やすべてがその中にあります。
だからこそ、“やめる”ことではなく、“気づく”ことが大切です。
たとえば──
・下を向いているとき、首や背中がどんなふうに感じるか
・呼吸が浅くなっていないか ・顔を上げたとき、気持ちが少し軽くならないか |
そんな小さな変化に自分で気づける力が、身体を整える第一歩になります。
私たちの身体は、もともと“まっすぐ”に戻ろうとする力を持っています。
ただ、現代の生活の中で、その声が聞こえにくくなっているだけなのです。
◆気づくことで身体が「選べる」ようになる
“やめさせる”という行動は一時的ですが、“気づけるようになる”という感覚は一生続きます。
「今日はちょっと下を向きすぎたな」
「背中が丸まってるかも」
「肩を一度回してみよう」
──こうした「気づき」は、強制ではなく“自分の選択”です。
それが続くと、姿勢は意識しなくても整う方向へ動いていきます。
◆親御さんにできること
「スマホばっかり見て!」ではなく、「最近、肩こってない?」
「ちょっと背伸びしてみようか」そんな声かけに変えてみてください。
子どもは、“責められること”よりも“気づかせてもらうこと”で変わります。
そしてその気づきは、自分の身体を大切にできる心につながります。
やめさせるより、気づかせる。
そのほうが、きっと優しく、ずっと強い方法です。
「ちょっと下を向きすぎてるかな?」「肩が丸くなってるかも」その“気づき”があるだけで、姿勢は少しずつ整い始めます。
◆今日からできるスマホ姿勢の見直し
側弯症の方にとって大切なのは、「姿勢を完璧に保つこと」ではなく、「負担をかけない工夫を続けること」です。
そこで、日常で意識できるポイントをいくつかご紹介します。
- ・ スマホの位置を“目の高さ”に近づける
机の上で、できるだけ顔を下げすぎないようにしましょう - ・ 30分に1回は姿勢をリセット
立ち上がって軽く背伸びをしたり、肩を回すだけでもOK - ・背中や肩のストレッチを習慣に
特に「胸を開く」「肩甲骨を動かす」ストレッチは効果的 - ・ 枕・椅子の高さを調整
勉強やスマホを見る時の姿勢をサポートする環境を整える
◆専門ケアで“背中の軸”を守る
当院では、側弯症の方が無理なく姿勢を保てるように、背骨・骨盤・肋骨のバランスをやさしく整えています。
無理に姿勢を「正そう」とするのではなく、身体そのもののバランスを整えることで、“自然にまっすぐ立てる”状態を目指していきます。
その方が呼吸も深くなり、心も落ち着いていきます。
スマホを使う時間をゼロにすることはできません。
だからこそ、ほんの少し意識を変えることが大切です。
スマホを持つ手を少し上げて、背中を伸ばし、深呼吸をしてみてください。
その小さな意識が、未来の身体を守ります。
お電話ありがとうございます、
サクシタ療法院でございます。